東京での住まいが、ようやく決まった。
築45年の木造アパート。
家賃は月6万円。間取りは2DK。
最寄り駅からは徒歩14分。
南向きで、目の前には畑と小さな公園が広がっている。
日当たりは申し分ない。
物件の詳細だけを並べると、正直なところ
「それで大丈夫?」と思われるかもしれない。
博多の部屋と比べれば、誰がどう見てもグレードダウンだ。
壁は薄いだろうし、設備も古い。
駅から14分というのは、雨の日や夏の炎天下には少し応える距離でもある。
それでも、この部屋に決めた。
退職を見据えて、住まいを選び直した
会社からの異動命令で、博多から東京へ移ることになった。
東京への転勤というと、華やかな印象を持たれることが多い。
でも正直に言えば、左遷だ。
肩書もない、希望もしていない異動。それでも、行くことにした。
そんな中で、最近、退職という言葉が頭の中でちらつくようになった。
まだ決めたわけではない。
ただ、ぼんやりとした輪郭で、それが日々の片隅に居座っている。
そんな中で、住まいについて真剣に考えるようになった。
博多の部屋は会社へ徒歩圏内で通勤かつ駅近、築浅、設備充実。
家賃もそれなりにかかっていたが、「それが当たり前」だと思っていた。
仕事があれば払える。
これからの自分の生活にはどんな部屋で家賃はいくらが理想なのか?
東京への引っ越しを決めてからずっと考えてきた。
求めるのは、家賃を抑えつつ 日当たり・料理ができるスペースと収納など
生活がしやすい部屋。
そう気づいたとき、この部屋は十分すぎるほどだと思えた。
築45年 古さがこれからの自分の生活に合っていると感じた
築45年と聞いたとき、最初は正直に言えば少し躊躇した。
だが、実際に内覧してみると、思いのほか悪くなかった。
廊下の床板はしっかりしている。台所の窓から小さな空が見える。
その景色が、なぜかよかった。
誰かがここで長い時間を過ごし、生活を紡いできた部屋だ。
その積み重ねのようなものが、居心地のよさに滲み出ていた。
新築のピカピカした部屋とは違う、落ち着いた空気がある。
ひとつだけ、気になることがある。お風呂だ。
いわゆる文化釜。
今までのようにちょうどいい湯加減かつ自動でお湯の量も調整してくれる機能はない。
不便さも慣れれば普通になるはず。
家賃6万円という「自由」
退職後の生活で、固定費をどれだけ抑えられるかは大きな問題だ。
博多の部屋並みの家賃を払い続けながら無収入で暮らすのは、精神的にも厳しい。
毎月の出費が少なければ少ないほど、選択の幅が広がる。
焦らず、好きなペースで次のことを考えられる。
月6万円の家賃は、東京の相場からすれば破格だ。その分だけ、心に余白ができる。
「お金のために何かをしなければ」というプレッシャーが、少し遠のく気がする。
駅から14分
駅から徒歩14分というのは天気さえ良ければ差し当たって苦にならない。
むしろ、毎日1万歩を歩くことを目標にしている私にはちょうどいい。
朝、近所を散歩する。
家の近くの小さな公園の前を過ぎて駅に向かう。
途中には図書館もある。駅ビルの店舗で生活に必要なものはほぼ手に入る。
駅までの道を散歩することでまた新しい発見もあるだろう。
グレードダウンでもあるがダウンシフトと思う
この引っ越しは、客観的に見ればグレードダウンだ。
思えば、博多での住居探しは仕事を意識して決めた。
会社から徒歩圏内、広いリビングにシステムキッチン・寝室・広いお風呂。
仕事が終わったらすぐにくつろげることを意識した。
近くには馴染みの居酒屋が数軒、足を伸ばせば全国から選りすぐりの食材を扱うスーパーもあり
生活は充実していたと思う。
東京で同じ条件の部屋がと15万でも難しい。
57歳からの暮らしに必要なのは、自分のペースで、穏やかに、丁寧に生きていける場所。
来月から、博多を離れ、東京での暮らしが始まる。
古い木造アパートの、南向きの部屋で。目の前には畑と公園。
望んだわけではない東京だけれど、朝の光がどんなふうに差し込むのか、少し楽しみになってきた。

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