56歳  業務変更に苦しむ

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30年続けたインストラクターの仕事から業務変更を命じられた。

親会社の電話サポート業務。いわゆるサンクスコール。左遷だと言われたら否定はできない。

自分の中でもそう思っている。


毎朝、パソコンを立ち上げて、今日かけるお客様のリストを広げる。
リストアップをして、情報を読み込んで、頭の中で一度シミュレーションしてから電話をかける。

やること自体は真面目にやっている。むしろ、こういう準備をサボると電話はもっと怖くなる。

それでも、電話のボタンを押す手が重い。

親会社名を名乗る、その一言がしっくりこない

理由は単純で、ファーストコールで親会社名を名乗ることが、どうしても屈辱に感じてしまうからだ。

自分の会社の名前じゃない。これまで積み上げてきたものと切り離される感じがして、
言葉が喉の奥で引っかかる。

だから、うっかり今の会社名を名乗ってしまうことがある。その瞬間、頭の中が真っ白になる。

お客様は当然「え?どちらの会社ですか?」となる。混乱させてしまって、申し訳なさだけが残る。
謝って、言い直して、要件を伝えて、電話を切る。

切ったあと、なんとも言えない気持ちになる。

これからいつまでこの仕事をするのだろう?

リストが進まない日ほど、心が削れる

さらにきついのは、リストが進まないことだ。

電話をしてもつながらない。つながっても忙しい。忙しいのは当たり前だ。お客様だって仕事をしている。こちらの都合で時間を奪っていいわけがない。わかっている。

わかっているのに、リストの行が減らないと焦りだけが増える。

しかも、成約率で評価すると私を飛ばした年下の社長に言われる。これまでと全く違う仕事。成果の出し方が違いすぎて、毎日気が重い。

救いは、お客様が優しいこと

そんな中で、救いもある。

比較的、お客様が優しく対応してくれることだ。こちらが名乗りを噛んでも、
言い直しても、露骨に嫌な反応をされることは少ない。

忙しいはずなのに、「はい、大丈夫ですよ」「わざわざありがとう」と言ってくれる人がいる。

その一言で、少しだけ呼吸が戻る。

「仕事だからやっている」だけでは続かない日もあるけれど、「人に助けられた」という感覚は、意外と長く残る。


今日もリストは全部は進まなかった。自分の気持ちも、全部は整わない。

それでも、準備をして、情報を頭に入れて、電話をかける。名乗りの言葉が喉につかえる日もあるだろう。
うっかり間違える日もあるかもしれない。

だけど、そのたびに、修正して、もう一度やり直して、次に進むしかない。

在宅の部屋で、親会社名を名乗る。それが今の自分の仕事だ。悔しさと情けなさと、
少しの感謝を一緒に抱えながら、今日も電話をかけている。

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