左遷宣告を受けて、もうすぐ一年になる。
あの時は、資産と退職金をぶつけて今すぐにでも辞めてやる――そう思っていた。
老後2000万円問題はクリアしていたし、60歳までは今の会社にいるつもりで、定年まで働けば資産としてなんとかやれる。
ぼんやりと、そう試算していた。
でも、一年が経って、ぼんやりだった試算を、もう一度きちんとやり直してみた。
月30万円の暮らしを、90歳まで続けると
月の生活費は、いまおよそ30万円。
家賃、食費、保険、通信費、それに月に一度か二度の旅行。
「贅沢している」つもりはないけれど、書き出してみるとそれくらいになる。
この30万円を、90歳まで33年間続けるとしたら、必要な総額はおよそ1億1880万円。
そこから、65歳からの年金(仮に月15万円、25年分で4500万円)を引くと、自分で用意しなければならない額は約7380万円。
私の資産は3500万円。
退職金は700万円。
合わせて4200万円。
7380万円-4200万円=約3180万円。
これが、今すぐ辞めた場合に足りない金額だ。
しかも、ここには家電の買い替えも、介護費用も、インフレも入っていない。
入れていけば、足りない額はさらに1000万、2000万と膨らんでいく。
生活費を絞れば、景色は変わるのか
試しに、生活費を月25万円に絞ってみる。
旅行を年に一度に減らして、外食も控えめにする暮らし。
それでも、今すぐ辞めれば約1200万円足りない。
60歳まで働いて、ようやく300万円不足。
65歳まで働けば、2000万円の余裕が出る。
もう一段、月22万円まで下げると、今すぐ辞めてもほぼトントン。
でも、月22万円は、旅行も趣味もほとんど手放す水準だ。
「静かな暮らし」と言えば聞こえはいいけれど、本当にそれで自分が満たされるのか、まだ自信はない。
3500万円では、リタイアできなかった
結局、いまの暮らしを大きく変えずに辞めるには、3500万円では足りない。
数字を並べてみて、ようやく腹に落ちた。
あと3年、60歳まで働いても、まだ2000万円以上足りない。
65歳まで働いて、ようやく数字が届くかどうか。
――そういう計算だった。
辞めなかった一年に、起きたこと
辞めなかった一年に、いろいろなことがあった。
家賃補助の打ち切り。
Slack一行での東京転勤の打診。
会社は私を“辞めさせたい日”に向けて、静かに動いているようにも見える。
悔しい日もあった。
腹が立つ日もあった。
それでも、毎月の給料は振り込まれて、資産は少しずつ増えた。
怒りに任せて辞表を出していたら、たぶん私は今、もっと不安な夜を過ごしていたと思う。
やめなくて良かった――今のところは
一年前の自分に、今の自分が声をかけるとしたら、こう言うかもしれない。
「辞めなくて良かったよ。今のところは」
不本意ではあるけれど、私は静かな退職をしている。
がむしゃらに働くことはもうしない。
期待もしない。
怒りも、できるだけ手放す。
ただ、与えられた仕事を淡々とこなして、月末になればお給料が振り込まれる。
その当たり前が、今はとてもありがたい。
左遷宣告から一年。
私はまだ、ここにいる。
やめなくて良かった――今のところは。

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